ある『愛』の詩(ミッドナイト・スネーク)
秋葉竹


その深き夜
ぼくたちは
この世界に巣食う
この世界の地の底を這いまわる
ふたりっきりの
蛇なのだと自覚した



それからぼくたちは
かつてよりよく知っていた幸せを
なんとか取り戻そうとするのだ

だれにもできない
永遠の『愛』をふたりが
ふたりだけが
手に入れることができるとは
信じられないけれど

どちらかが
先に死んだとしても
残されたひとりは
幸せなまま生きていけるという
永遠の幸せ

そんなもの
あるわけ
ない

けど

あると
ふたり
信じようとして
信じようとして

ある日気づいてしまうのだ
ひとりは寂しいという
嘘をつけない真実に


ふたりはふたりして
もはやどうにもならない
孤独の恐怖に
襲われることとなる

それからぼくたちは
かつてよりよく知っていた幸せを
なんとか取り戻そうとするのだ

だれにもできない
永遠の『愛』を手に入れることは
できやしないんだけれど
手に入れられないとしても
今のこの『愛』は嘘じゃないんだからと
刹那の『愛』を楽しもうとする

それがたとえば今日だよ

可能なかぎり
アッチの世界へ行こうとする
ね?
行っちゃおう、行っちゃおう、
どこまでも、行っちゃおう、
って、
そんな刹那『愛』だから、
ぼくたちは
羽目外して
みだれまくるんだって
『愛』が可変の息苦しさから
逃れたくって
その日だけは
狂いまくるんだって

ぼくたちを

糾弾するあなたたちは

なにも知らないでしょう?

もちろん、
永遠の『愛』なんて
考えたことも、ないんでしょう?

永遠の『愛』にこだわる
なんて
そんな愚かなオトナは
どこにも
いないよね?

いいよ、だから、ぼくたちは
ただ、ぼくたちだけで
騒ぐから。

だからもう、
そんな目で見ないで。
でも、
見られたって、いいように
ほら、
ぼくの顔、蛇のままでいるでしょう?








自由詩 ある『愛』の詩(ミッドナイト・スネーク) Copyright 秋葉竹 2019-02-17 11:56:31
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