わからずや
やまうちあつし

疑問符を売っている店がある
品揃えはなかなか豊富
大小さまざまな?が
所狭し、と並べられている
用途はさまざま
小さいものはカバンにつけたり
部屋のインテリアにもよい
摺り下ろしてスープに入れたり
誰かを殴る鈍器にも使える
巨大なものを特注して
広場の中央に飾った
国もあるそうだ
(クーデターにより
 今はもう存在しない)
私もひとつ買い求める
バスケットボールほどの大きさで
価格も手頃なものだった
懐に抱えて帰宅する
包装紙を破いて実物を見せると
妻はなじった
そんな意味のないものを
無駄遣いにもほどがある
ひとしきり議論した後
気まずい雰囲気のまま
お互いにふて寝してしまった
深夜
ふと目を覚ますと
妻の姿がない
リビングでは
暗闇のなか
妻が棒立ちになっている
視線の先には
昨夜買ってきた疑問符
キッチンテーブルの上に
まっすぐに屹立し
鈍く虹色に光を放っている
スイッチも電源もないのに
それ自身
光を持っているとしか思えない
きれいね、と妻は言う
そうだね、と私も言う   


自由詩 わからずや Copyright やまうちあつし 2019-02-15 14:03:03
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