別離さん
後期

別離さん


じつは、
もう、あきたんだ・・・

ぼくの底も、見えただろうし・・
きみの底も、丸見えだ・・・・・

縄で、降りていったら
つきなみの愛欲と悲しみと
不安と諦めが、車座で
酒をのんでいた
あんたは、誰だときかれたので
別離ですとこたえた
そうか、あんたが別離なのか
別離は、俺らを覗きこんで
おーい!の言葉もなしに
立ち去っていくものだと
おもっていたけれど
同じ底を踏んでくれて
ありがとう

ごく普通のビールを
土色のマグカップで
ふるまってくれた
つまみは、コンビニで
売ってるような
ベビーチーズを二つくれた
つきなみの愛欲は
どろどろした
愛と欲を語ることもなく
悲しみと不安と諦めも
べつだん愚痴をこぼすこともなく
別離であるぼくのために
滑稽な踊りを、えんえんと
見せてくれた
踊り疲れると
ぼくの拍手を制して
そんなんじゃないから
そんなんじゃないから
と、また車座になって
チーズをくわえた

私は、男に見えるだろう?
でも、性別は、女性なんだ
諦めが、長い髪をかきあげて
わらった
いろいろあったとおもうけれど
悪く思わないでやってくれよ
いろいろあったとおもうけれどね
さぁ、そろそろ地球が、動き出すぞ
別離さん、縄を上る時間だよ!
ぼくは、別離らしく
「さようなら」を四つ言い
底をあとにした

おーい!
と、底に向けて
叫ぶと、おーい!
というぼくの
おーい!が、木霊して
消えた

ぼくの底も丸見えだったのだろう
縄に滑って、怪我していないだろうか
しっかり、もてなしを
してもらえたのだろうか
彼女は、
「さようなら」をいくつ
言って、ぼくの底を
あとにしたのだろう




自由詩 別離さん Copyright 後期 2019-02-15 11:01:26
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