汚れた服が落ち着く
こたきひろし

着るものにはこだわらない
同じ服装を何日もしてしまう

風呂は毎日入るけどほとんど体は洗わない
それより
お湯につかってぼんやりとしてしまう

とても不器用で
無器用で
生きるのが下手だと思う

そんな自分の顔や姿を
洗面台の鏡に写したりも滅多にしない

子供の頃から写真が嫌いだった
撮られるのがだけど
それでいて家族のアルバムを見るのは好きだった
そこには
嫌がるのを無理矢理写された自分の写真もあった

俺も無駄に歳をかさねたかも知れない
気がついたら
お袋が認知症にかかっていた
父親が脳出血で倒れて呆気なく死んでしまってから
間もなくだった
家を継いだ長男夫婦は面倒見切れなくなって施設に入れた

そんなお袋を俺は夫婦で尋ねていくと
俺の事なんてすっかり忘れていた
俺はそんなお袋の顔や姿を携帯のカメラで写真に撮った
自分でもなんでそんな事するのか理解できなかった

せっかく撮った写真を妻は直ぐに削除した
そんな事したら「おかあさん可哀想だよ」
と言って

たしかにそうかもしれない
たしかにそうかもしれない

俺は悔いた



自由詩 汚れた服が落ち着く Copyright こたきひろし 2019-02-13 06:39:57
notebook Home 戻る  過去 未来