煮ても焼いても食えないタイヤ
ドライ運河

お見通しだった
見透かされていた
てめえらレントゲン技師になっちまえ!
なんて
リードブロウ
振るうまでもなく
俺の拳は骨折していた
なんのジョーダンだ
ジャイアン
奴隷のように働いてから
俺に教えてくれるんじゃなかったのか

歩絵夢が独り立ちしちまった
早すぎやしないか
お弁当は持ったか・・・?
そしてボブマーリーもいなくなった
シャツから
なぜなんだ・・・
モミジなのかワカメなのかよくわからない草
しか載っていないシャツが残った
やっぱりラー油のシミか・・・?
それはそうと
ジャイ子っていう名前
いい名前だね
ジャイアン
俺のポエムでリサイタル
開くんじゃなかったのかよ
置いて行かないでくれよ・・・


急いでいたな
あの日は本当に急いでいた
ハンドルだけ引っこ抜いてそのまま走り出してしまった
最初だけは軽快だった
飛んでいるみたいだった
俺が走り去った後には
電信柱に張ってあるチラシが剥がれて
通り一面に吹雪いていた
懐かしい
今の俺なんて
駅前の広場でティッシュを受け取りたくて仕方がない
生き物
昨日
ショックだったことは
ガラスに反射する己の姿を見かけちまったこと
確か
うーん
東中野のつけ麺大王の前だったかな
シフトレバーがないことに気づいて
顔から火がでるほど恥ずかしくて
実際燃えていた
乾燥をなめちゃいけなかった
唇を舐めすぎると
余計にパサつくらしい
知らなかったよ


もうちょっとだけ小滝橋通りを進んだところで
ブレーキが付いていないことにも気づいた
冷たい汗がツツーっとお腹に流れて
パンツのゴムが湿るな
嫌だな
とまず思ったのだけれど
止まるに止まれないし
下り坂に差し掛かったら
俺はいったいどうなっちまうんだ!?
生まれてこのかた
まだチョコももらってないのに…
チロルチョコ
あの娘
またバラまいてんのかなあ
きなこでむせ返る
あの娘をガソリンにしたい


もうちょっとだけ外苑東通りを進んだところで
アクセルが付いていないことにも気づいた
由々しき事態だった
いったい何を推進剤にして
俺はどうやっておうちに帰ればいいんだよ・・・
くっそお
なんだよこのハンドル
すれ違う家族連れが笑っていたのは
そういう意味か
どうせステーキケンに行くんだろ
ちくしょう・・・ ちくしょう
ライチを剥かせたら一番だった
ずっとライチだけ俺にはライチの皮だけなのに
何も残らないじゃないかよ
あんまりだ

ふくらはぎが痛いよ
両腕が上がらないよ
つらいし
寒いよ
蒲田駅のトイレで
便器に腰をかがめていたら
回復した


自由詩 煮ても焼いても食えないタイヤ Copyright ドライ運河 2019-02-12 20:49:11
notebook Home 戻る  過去 未来