北上川
Giovanni

夏の花巻
駅を降りたち
しばらく歩くと
緑の草地の中に
北上川はあった

イギリス海岸に
たどり着いて
小高いところにある
一つのベンチに腰掛けたとき
思うこと考えることの相違が
夏の熱風の渦のように
頭を駆け巡って
なぜだか涙しそうになった
古代と現代の暗い境界に
足を踏み入れたように
冷たい澱が心を撫でて
なぜだか涙しそうになった

散歩していた老人が
ずっと座っていた私に
クルミをくれると言った

これをもっていれば
どこまでも幸いに
いつまでもともに
歩んでいけたのだろうか

取り戻せない時空を思って
また涙しそうになった

何年過ぎてみても
私の愚かさは変わらない
でも
それはいけないことであろうか

夏の花巻
駅を降りたち
しばらく歩くと
緑の草地の中に
確かに北上川はあった




自由詩 北上川 Copyright Giovanni 2019-02-12 20:23:36
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