かなしみにも陽があたる
タオル

街1

好きでもないまち、でもきらいとまでいかないまちに
好きなきみがいるのはたしかなことだった
きみは本が好きで
きみに好かれている本をわたしはちかいうちに読もうと思っている
風とか、ごくごく ありふれていて いいね  
頁がいっせいにざわめくように
バイバイ

 
 バス停できみがふりかえる
目をほそめ、光をもとめている道に
 はぐれたような立ち方をして
   どんな本もいらない気がして
    字を読まないできみだけの

いっしょう言葉を聴いていたい


街2


一人で大きな十字路を渡っていた

あまりに大きく、中心に向かうほどじぶんが渡り鳥の群れの 一羽になっている気がして、
すこし高揚するほどの

見ればまわりの人々もたしかにそうで
翼のように足を伸ばし、ながく続く白い縞を踏みしめていた

渡りきるとき、不意に感じた

この街は巨大で、いまここにもそしてきっとわたしのまえにも
不具の心を抱いて歩いている者がいたこと
あたりまえのこと
それが街ということ
皆の横顔の表面しか見えない
でもそれが時代というもの どこの時代にもいたあたしのような――





……「かなしみにも陽があたる」


だれのものでもない アナウンス


心のなかの太陽はいつもしんとひかりをひろげて 





 
 



自由詩 かなしみにも陽があたる Copyright タオル 2019-02-10 18:22:49
notebook Home 戻る  過去 未来