『好き』につける薬
立見春香

メガネをはずすから
いけないんじゃない?


どれだけ好きなのかの実験を
いつやるのかを
待っている

負けないはず

あなたの優しいところ
あなたのほのぼのとしたところ
あなたの少し淋しげなところ
あなたの嫌なことに耐えるところ
あなたの嫌なことは嫌というところ
あなたの
未来には希望の匂いしかしないところ
あなたの
夢色の虹を雨上がりの空に掛けて
ただそこに行きたがっているところ


ずっとただの知り合いで
過ごしていたので
突然目覚めた
ちゃんとした『好き』って気持ち
急には手がつけられないんだ

古くからこの胸に住まわせている
たにんを信じない
騙されたくないからねという
疑いをいくらあなたに向けてみたって

世界には
真っ直ぐな光の道を歩んで来た人も
いるんだ

(なら、そのかなしい顔は、なに?)

世界には
そんな人もほんとうにいるんだ?

眩しすぎる
このあと死ぬまでの最後の希望のような
笑顔
プラチナこころが漏らした明るさ

そして
そのなかにある
かなしい虹もみえる

そっとそっと
神さまに近づくかのように
いつもゆっくりとあなたに向けて
この気持ちを届けたい

(嫌われたくないから)

ただ『好き』を届けたいだけでなく
こころのすべてをあなたに捧げ
あなたとひとつになりたいのですよ

(怖がらないでね)

厚かましいのは
恥知らずな私の物欲しげな笑顔?

つける薬
ないだろう?

どれだけ好きなのかの実験を
いつやるのかを
待っているなんてさ
その理系メガネがかわいいあなたを
バカにするにもほどがある



メガネをはずすから
いけないんじゃない?

メガネをはずすから
照れるんだきっと



《負けるはずない》
この気持ちはわかるけれどもね
すでに数式上は
証明されているものね






自由詩 『好き』につける薬 Copyright 立見春香 2019-02-09 03:56:27
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