しんしん
ドライ運河

なぐさめるなんて性に合わないね
お酒に飲まれるなんてらしくないね
明日は雪らしいよ
都心はてんやわんや
去年はすごかったね
手すりに積もった雪が
滑り台からスルスル下る
でも背の高い花は相変わらず
線路脇でたたずんでいて
なんてことないさ
からっ風に鳴いていた
ひとつとして同じ結晶はないよ
ひとつとして変わらないシルエットはない
話そう沢山
積もり積もった汚れについて
まとわりついた不安について
この前あなたはしゃくりあげて
こう言っていた
俺はさ味方だから
甘い言葉の何がいけないんだい
知っているんだよ良いところを
悪いところはもっと知っているよ
お伽の国で生きてるわけじゃない
ましてやお花畑で踊ってるわけじゃない
頭ではわかっている
感情に押し流される
孤独にさいなまれる
居酒屋でバカ騒ぎはしなくていいさ
帰り道で
とつとつポツリポツリ
静かにさ
話したいんだよ
明日は雪らしいよ
たぶん少し積もるよ
それはそれで結構じゃないか
真夜中に神奈川の
そうだなあ
湾岸線沿いの工場地帯を
ドライブして
ベイブリッジをくぐり
しんしんと降る雪を見る
働き者の工場の灯りが
まばらに散らばっている
煙がもうもうと立ち昇っている
すごいなあ
俺たちは豆粒だよ
所在無げに生きたっていい
沢山話そう
疲れたら黙っていよう
満ちては引いて
数年後に笑い合えないとしても
易しい言葉しか
浮かんでこない
なぜだろうね


自由詩 しんしん Copyright ドライ運河 2019-02-09 00:14:41
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