はちみつとジンジャー
そらの珊瑚

冬のまんなか
人のいなくなったリビングで
紅茶が湯気を立てている

季節は
迷うことのない水
人も犬も猫もミジンコも
みんな流れて
泳いでいく
目を開けているのが
辛くなったら
閉じて
腕が疲れたら
死んだようになって

つないでいたはずだった
もうひとつの手は
いつか
ほどけて

さあ

ティーカップの中で
スプーンはさざ波を起こし
はちみつとジンジャーは
ぐるると追いかけっこする
飲み干すのが
惜しいような
飴色の光景

からくてあまい
あまくてからい
海はまだ遠い

飲んでしまったら
幸せな湯気も消えて
からっぽの現実だけがあらわになる





自由詩 はちみつとジンジャー Copyright そらの珊瑚 2019-02-08 10:29:50縦
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