冬の先
水宮うみ

僕たちは、自分のために泣くことができる。
僕も君も、彼も彼女も、傷つくことのできる心を持っている。
悲しいことは、傷つくことはそんなに悪いばかりのものじゃない。
自分の悲しみに寄り添ってくれる歌を見つけたとき。
自分と似た傷を持つ人と出会ったとき。
僕たちはもう一度、世界を信じようとする。
自分や他者を、大切にしようとする。

悲しいことがすべて無くなれば、嬉しいこともきっと無くなる。
だから僕は、僕の悲しみを、喜びに会うための物語なのだと思うことにした。
どんな人でも、笑う姿は春みたいだ。
日を追うごとに、空も街も、僕も君も春めいていく。
冬を越したからこそ出会える、桜並木。


自由詩 冬の先 Copyright 水宮うみ 2019-02-08 06:56:07
notebook Home 戻る  過去 未来