詩人の木
やまうちあつし

ペンのインクが切れた
詩人は詩が書けなくなった
けれども書けない本当の理由は
それではないことを知っていた
切れたのは
ペンのインクではなかった
仕方がないので
詩人は庭に木を植えた
詩の代わりに育てようと
水をやり世話をした
木は生長を続け
いつしか実をつけた
真っ赤に熟した
おいしそうな実だった
一人では食べきれないので
近所の人を呼び
その実を振る舞った
近所の人はお礼に
詩人にペンを贈った
この日から詩人は
ふたたび詩を書くようになった


自由詩 詩人の木 Copyright やまうちあつし 2019-02-03 10:09:45
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