クロスオーバー ナイト
長崎螢太

 今日が、微睡んだ瞳の奥で
 希釈されていく


感情は、乾いた風に吹かれ、干からびて
身体の襞に折り畳まれる
けれど、記憶はいつかまた蘇る


あなたが必要としているものは
全て、あなたの胸の奥深くにあるのだけれど
その事に、あなたは気付かない
そして、誰かの届くことのない手紙を
何時までも待っている

待ちくたびれた、あなたは
時々、ため息をついて
その度に
あなたの瞳は曇ってしまう

それから、あなたは
本当の青空を
長い間、見ていないことに気づく
色を失った瞳が映す世界は
モノトーンのフィルター越しのように
薄ぼんやりと陰っていて
遠くを見通すことが出来ない


本能、なのかもしれない
本能という不確かなものに
わたしたちは縛られていて
明るい光が足元を照らすことを
阻害している

つらつらしているうちに
夜が明けてくる
淘汰された記憶は、整理され
粉飾されて
新しそうな今日が
何食わない顔をして
始まる
 


自由詩 クロスオーバー ナイト Copyright 長崎螢太 2019-02-01 14:03:15縦
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