雪の歌《改》
秋葉竹


林檎の木からは
そこに巣食う虫どもを
怯えさせる匂いしかしない

空気も甘酸っぱいまま凍りついた
林檎園の丘の上に転がるように
あたしの脱け殻は
星の下で眠るんだ

陽だまりの日常のなかに流れる
生きているのを許可された時間のなかに
屹立する独善的アブノーマルがみえた

たとえば
偽善?

たとえば
盲愛?

カタチのある歌を歌った夢が
あたしには必要なんだと勘違いする
危うい心の上にゆらゆらとゆらゆらと
立ち込める化粧の匂いがする

それが哀惜の地峡のエッジ
2度と求めない爛れた愛欲

降り積もる冬の林檎園に
羽ばたく若い裸の鳥
かたくなだけど笑うと可愛い顔で
こっそりとあたしだけに歌ってくれる

《この
《世界がいまにも終わりそうな
《懺悔の季節に

溶けるたび雪の結晶が自分の儚さを悔やみ
丘の上の少女の夢の恋の儚さの上に
儚さを同化するためおおいかぶさるのだと

まるで暗黒の宇宙が青い地球の極地で
悲しみの羽を休めるために
地上に降りてきているかのようだと

聞こえないほどのささやき声で
あたしにそっと打ち明けてくれた

それがあたしが憧れる歌なんだ

世界にけがされて
うすらよごれたけばだったこころを
しっとりと泣きたくなるほど
やさしく
慰めてくれる
ちいさなかなしげな雪の歌なんだ

《ねぇ
《あたしのことが
《好きなんでしょ?
《えいえんの
《なぞすぎます!
《クスクス………









自由詩 雪の歌《改》 Copyright 秋葉竹 2019-01-31 04:22:00
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