えんばー4
若乱

 ある日の隠喩

困り果てた誰かの海は雨が降ってぽこぽこ生まれた
散らばる隠喩の危うさは水中を散らばる針のよう
僕はあるはずの歯がゆさをきっと明日が来ると信じて幸せ色にしたい
しかし言った分だけ隠喩は詰まってゆくから他の住む現実はふと、ちぎれそうになる

時に隠喩は息が詰まるほどありすぎたりもする
満ち過ぎてはじけそうになりながらも、時は知らぬ間に溶かすだろう
ただ何とか今日をつなぎたい


  頑張り方

どんなに遅れていたって
一歩ずつしか進めない
状況がどうであろうとも
できることはいつもと同じか
ほんのちょっと頑張れるかぐらいだ

機会がどれだけの無駄死にを続けようと
僕は生ている限り進もうと思うこと
今日、もしかしたらダメだったかも
今日、もしかしたら一歩進めたかもと

部屋中みちみちに詰まった
僕の無知が取り逃した機会の亡骸という
絶望と死の隣に座り

無知は暗闇を手探りながら
なるべく知るために頭を枯らしながら

それであって関係なく確かな
自分に向かい自分のできることを
間違わない、最大のあやまちを

頑張り方が分からない

2019/1/25


もっとずっと話がしたい
木枯らしが巻き上げて
刹那積もった落ち葉の様な
儚い時間が愛おしい

僕らはいつか忘れてしまうのだろうか
僕らはいつか消えてしまうのだろうか

忘れないでいて心に降った暖かさよ
消えないでと呟けることの暖かさを

2017/11/13

囲われた場所に埋まった影を
朝日が照らしだしてゆく

真っ黒な朝日だ

空が泣きたがっている

2017/11/14

ざりざりとした陽が射して
柔らかな草に人が昼寝をしている

手を掲げて小さく握った
空間にちらばる
摑み切れない感情だろうか

2017/11/14

真っ黒な地面に猫がいる

こちらを見ている

そこは暖かいのかな
雨が降る

2017/11/14

実に一瞬な出来事だ
木の葉が舞ってた
風が鳴ってた

実に一瞬な出来事だ
君は待ってた
あの子が笑う

実に一瞬な出来事だ
僕が握った掌の
握る強さの暖かさなど

2017/11/14

乾いた風に揺れ動かされ
最初はぐー
必ず負ける
ふりして遊ぼう
毎日が愛おしいから

2017/11/14

ざらざらと木々が揺れてる
上を飛ぶ
吹き飛ばされてる訳じゃない
チュウヒの翼の内側は真っ白

2017/11/14

栗は今年は豊作で
皆 眉間にしわ寄せて
深く考えなくてもいいのに
掻きだすようにこそげて食べる

2017/11/14

雨に降られて
猫たちは机に足跡を残す
なーなー鳴く
寒いから
今日の寝床は米袋

2017/11/14

ここにいてもいいんじゃないの
死んだって誰も悲しんだりしない

ここにいてもいいんじゃないの
生きたって誰も喜んだりしない

ここにいてもいいんじゃないの
それぞれが自分の顔を見て歩いてるから

だからここにいてもいいんじゃないの

2017/11/14

忘れたころにやってくる
機械仕掛けの現実に
ゼンマイをまく 事を忘れる
毎度の事に
後悔が腹を立てるのも通り越して
とぐろを巻いて居座る

2017/11/14

毎日のように木の葉が落ちる
森が死んでゆくようだ

燃えて死んでゆくようだ

全てを忘れる冬が来る

2017/11/14

樹々が珍しく主張する

新緑は
生まれてゆくからか

紅葉は
死んでゆくからか

時が
がばりと大きな目を開けるとき

樹々は珍しく主張する

2017/11/14

猫が丸まって寝ている周りに
落ち葉が吹きだまっている
何も知らずに猫が寝ている

明日も知らずに猫が寝ている
感情が積もり 散ってゆく

2017/11/14

置き土産の様な
一握りの悲しみが

砂埃になって舞う

誰かが休憩の時間に集めた

明日の天気を占うように

2017/11/14

切り株から萌芽している
何を吸ったらこんなにも

黒々と生きる意志蠢いて

少し羨ましい

2017/11/14


何も解決しないのに
僕は変わらす詩を書いている

もう切り倒されたはずなのに
大きなケヤキの切り株は

生きようともがき
だらだらと木口から樹液を垂れ流す
まるで泣いているかのようだ

2017/11/14

朽ち果てるまで笑ってみたら
ほどかれて土に還るでしょう
忘れ去られるように
シイタケの餌になるのでしょう

あるように生きるべきなら
僕はあの時抱きつけばよかった
倒れるように
泣けばよかった

2017/11/14

落ち葉に埋もれぬようにあれ

振り払うようにつむじ風

苦し紛れの残響を現実が
逐一踏みつぶしてゆく
2017/11/14

せとぎわの
あまりに深みを歩きすぎて
どこにも行けぬ足焼けただれ

生きたい

2017/11/15

古傷かっさくことほど
無意味なことはないと気づいた
だけ良かったって事にして
思い出しただけでこれだけの
吐瀉物でてくるのだから大したものだ
排便に困ったときは
誰かに過去を話せばいいらしい
それだけで僕は切れ痔爆発排便地獄
フォーエバー
2017/11/15

埋もれている世界の約束事を
かいつまんでは小さくひねりつぶす事を
成長と呼ぶらしい

しかし僕は優しさを忘れたくない
彼女は言った 最後に僕に
客観し続けた彼女が言った

それが僕を生かした


2017/11/15

あの頃の苦しみが
開かれてしまった

世界が一層鮮やかになる

2017/11/15

  出し殻

わしはだしがら
じょうぶつどきじゃ
だしがらふりかけ
しらすまぶしていただきます
わしゃあだしがら
けむになろうぞ
きえてくだしがら
さよならだしがら
またあおうだしがら
おんせんにでもいって
しおっからいので
ぽたぽたにでもなってね


自由詩 えんばー4 Copyright 若乱 2019-01-26 17:13:08
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