えんばー3
若乱


  藍の葉

夏の勢いのピークは過ぎて

深くなってゆく緑に埋もれながら

もう必然を忘れたのって
泣いた後の脱力のうちに
ふつふつと小さな実をつけている

葉の色はきっと甘いあお色なのだと思う
2017/8/3


 一瞬

たった一人に会えた時の
すべてを忘れる一瞬は
一瞬さ そうだとも でも
心に残った君の美しさはある時ふと
僕の心を浄化するだろう
2017・8・2


 亡骸

何かがつながっているようで
別に何も見えやしないさ

消えてゆく本当たちは
くるむ手だけになってゆく
亡骸を慈しんでいる

風がさらった
とうに腐った心の花を

浅く開いたきらきらとした瞳に見える

奥の暗がりだけが「本当」に残されて

くつくつとかたい滴がこぼれ生まれている

2017/8/2

  うた

なぜ君はよく泣くの
なぜ君はたまに怒るの
なぜ君はいつも上機嫌なの

心を涸らしながら叫んでる
生きていると叫んでる

その握りこぶしから
ぽたり ぽたり と垂れるのは
搾りたての生き血のうた

2017/8/1


 毒

君が泣いているみたいで
うつくしく思うから
僕の毒で浄化したいと思った
少しでいいんだよ きっと僕は

いつまでもついてくるものたちよりも
方法で固めた僕の心で
きみに愛を届けたい

切実なおびただしいかたまりは
くりかえしこねればきっと
陶酔の空白になってくれる
一緒に温泉行けたらいいね

2017/7/2

  さとるとは

さとる、とは
超絶的な
バランス感覚だ
あったりなかったりする
超絶的なバランス感覚だ


 有無

あふれでる言葉たちに
所在のなさを問うている
絶望的なぜったいも
漂泊とした心地よさも
知らないことから生まれるのに
だらりと、もたれるその確かな壁は
確かな地面を思うと消える

光をふき取る雑巾は
まあたらしさに いびつにまだらに
表面だけの黒さが付いている

20017/8/11

  薄味

去ってゆくそれらしさに耳を傾ける
ありすぎる唄は
どれがいいのかとか分からない

切実がない分の
たくさん落ちる実の
受け皿を探している

2017/8/4

  
  さく
  
裂くであろう言葉の
受ける熱を考えて
選ぶ言葉 結局裂くのさ

言葉に裂かれた断面は癒えないけれど
生きるという地面は割れていない と
地面という言葉が裂いた

夏が惰性を通り過ぎた
目を眩ませて
生きることは裂くことだ

2017/8/4

  日

やっぱり乳首見せただけで
多量出血で死に至る
うまいバランス感覚を知れ

馬鹿にされないことが
僕を腐らせてゆく
何も持っていないのに

2017/8/4


自由詩 えんばー3 Copyright 若乱 2019-01-24 18:16:45
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