大丈夫
ドライ運河

くだらない話をはじめたい
くだらないと最初に銘打ってしまえば
くだらなくても許されるだろう
という保険をかけておきたいし
保険をかけておくという保険をかけて
保険としての前置きをなによりも積極的に吹聴してまわり
さらなるくだらなさを確保することを証明できるし
くだるための推進力を維持できないともっぱら
断言することで保険の影響力を更に匂わせ
これ以上読み進めることに対して
こちらは一切の責任を負いませんという姿勢を
強調するという保険をかけながらも
やはり保険をかけるということは
実はそこまでくだらないとは思っていないからで
多くの人に覗き込んでもらいたいという
欲望から端を発する露出した保険なのであり
くだらないのだからハードルは極めて低いのだから
さあおいで飛び込んでおいでそこそこはくだらないけれど
思ったよりはくだらなくはないのかもしれないし
くだらなかろうがくだろうがくだり続ければいずれ
くだることに慣れてしまいそれってもうくだらないってことじゃないんじゃない
という正論を差し挟む無粋なコメンテーターをクビにする特約も
保険内容に明記されており
落胆の色を隠蔽しようがしまいが
今そこにあるくだらなさは否めないのだから
なにはともあれページをめくることから初めてもらいたいという
やけっぱちかつ丸腰な気持ちを失ってもらいたくはないので
瑞々しく真っ青な両腕を振り乱していた樹木だったとしても
自分の背丈よりちょっとだけ高く舞いあがり
住みなれた街を一望したあの花びら一枚ぽっちの感情を
この極めて低いハードルを乗り越えていくための栄養源に変えられるなら
くだらないものを許容することこそ即ち
清濁併せのむという小事が大事へとステップアップする瞬間の
保険の適用に他ならず
安心して保険の概要を信用して
このくだらない話を進展させてもらいたいし
転がりだしたストーリーのくだらなさをも血肉として
水がセルフサービスのインドレストランのような
ゆるぎない商売魂と一本筋の通った保険のガイダンスを守りきり
神田川沿いにあんなにたくさん敷きつめられていた薄紅色は
排水溝の奥に沈んでしまったという
ショッキングな現実に打ちのめされた人物が毎度のこと
自営業ですと必ず見破られる嘘を記入してしまった二秒前の
三秒後に一秒だけ過ぎてしまった一秒間を再生する行為に他ならないわけで
つまるところ
保険に入っていて良かったと薄い胸を撫でおろした
隣のワタ菓子のような生き物のシルエットが
くだらなさの中にくだらない以外のくだるものを砕いてばらまいてくれるから
下り坂を駆け下り続けたとしても加入していけたらいいな
保険が切れるまでずっとかけ続けていこう
くだりが保険なくても
保険だくらもてくとな
だいじょうぶ

だョ


自由詩 大丈夫 Copyright ドライ運河 2019-01-23 23:23:27
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