さかなひとり
卯月とわ子

この水槽は
他と比べたら広いものなのだろう
けれど
この限られた自由の中で
泳ぎ回る僕は悲しい

美しい姿をしていても
僕は水が無ければ生きていけない魚で
君の目を楽しませても
それは永遠じゃない

君のくれたこの水槽と云う自由の中で
僕は何も知らないフリをして泳ぎ回る
もうこれ以上大きくは成れないから
これ以上大きな水槽を望む事は出来なくて
君はあと数十分もすれば僕に飽きるだろう

娯楽が溢れかえるこの部屋では
君を引き留めておけるのなんてその程度さ
与えられた自由なんて
僕が選択したものではないのだから
満足なんてあるわけないさ

それでも僕は綺麗な鱗を持つ魚だから
ここで泳いでいるしかないんだ


自由詩 さかなひとり Copyright 卯月とわ子 2019-01-20 19:43:46
notebook Home 戻る  過去 未来