一角獣
やまうちあつし

一角獣が来ないかなあ、と思っている
全部解決するのになあ、と思っている
さっきから突っ立って待っている
一向に来ないので待ちくたびれている
乙女じゃなきゃだめかな、と思っている
確かに年を取ってしまったしな、と思っている
ましてや女でもないしな、と思っている
一角獣は何を食べるのかな、と思っている
やっぱ花とかかな、と思っている
まさか餓死していないよな、と思っている
共食いとかしないよな、と思っている
それにしても来ないな、と思っている
ペガサスじゃないんだよな、と思っている
同じようだけどジャンルが違うんだよな、と思っている
少しファンシーすぎるというか、と思っている
ペガサスに憧れたことは一度もないな、と思っている
野球好きな人からは同じ馬やんと思われるだろうな、と思っている
足が疲れてきたな、と思っている
待ち疲れたので煙草でも吸おうかな、と思っている
と思ったが煙草は吸わないのを思い出している
壊れた天使を抱いている
という詩を書こうとして書けないままだ
気が付くと下腹が痛い
振りむけば一角獣が来ている
角が下腹を貫いている
これを待っていたのかなあ、と思っている


自由詩 一角獣 Copyright やまうちあつし 2019-01-19 18:53:17縦
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