ひとり
犬絵

みかんが美味しい

コタツに入り
テレビを見て
くされ縁のあの人と
いっしょに食べる

みかんが美味しい

吹く風は
窓ガラスを叩いて
あたたかい部屋に
入ろうとしているのか

裸の気持ちで
風の音を聴くと
湿っぽい想い出が
切り裂かれるようで怖い


みんなのことが
わかって寒くて震えたのだ

だれも諦めるために
闘っているわけではないから

すこしでも
思い通りにしたいのだから

そのさきを考えると
世界はだれかが悲しむための舞台だ

みんなのことが
わかって寒くて震えたのだ


みかんが美味しい

コタツに入り
夢を見ていたのか
テレビを見て
涙を落としたのか
くされ縁のあの人と
いっしょに食べる

みかんが美味しい
それが夢だった冬の日
みかんの上にやはり
涙の滴はこぼれ落ちたのだった







自由詩 ひとり Copyright 犬絵 2019-01-09 11:31:11
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