時計
中原 那由多

釣り合った天秤のように厳正

呼吸の仕方を忘れてしまいそうであっても
不意に竜巻の怪盗が訪れようとも
プラネタリウムは終わらない

ここで百年、待っていようとも

追憶はあいも変わらず
乳白色の檸檬となり
握り潰せど君は来ない


炎天下の影法師のように共感

結ばれてしまった赤い糸
切れば目潰し、壊れた操り人形
手繰れば当然、見飽きるほどに点滅

蛇になり湖畔を往け

四畳半を飛び出して
宴の呼び声を追いかけて、追いかけて


断頭台への階段のように冷笑

歩幅さえも定められ
小さな歯車は成すすべもなし
その針で貫いてくれるなら
どれほど楽でいられたのだろうか

絶え間なく黒い煙が乱舞する

走馬灯を彩る為には
私にだけは嘘をついてはならないのだ


夜明けの鎮痛剤のように救済

果汁が沁みる薬指も
酒に溺れた偏頭痛も
冷たい手錠のセンチメンタリズムも
いつかは忘れてしまうのだ

ちっぽけな踏み台からさっさと飛び降りろ

不恰好に躓きながら
確かに踏み締める今、今、今


自由詩 時計 Copyright 中原 那由多 2018-12-14 20:08:14縦
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