かわりばえのしない弁当
日々野いずる

毎朝お弁当を作らなきゃいけないので
私は毎日卵焼きを焼く
冷凍食品の中にひとつだけ
手作りがある
ありがたい、と思ってくれるのか
ただ、また冷凍食品か、とだけかもしれない
昔から私は至らない母で
息子たちの視線が語っていた
燃える目をしてかけよってくれたのも
幼く、何もわからない時だけだった
それを抱き寄せたのか
それの頭をなでたのか
ひとつだけ卵焼きを入れる
冷凍食品が占める弁当が
私と子供の距離で
無言で返される空の箱が
シンクに沈んで洗われ
また朝に冷凍食品と卵焼きが
詰められて
「いってらっしゃい」


自由詩 かわりばえのしない弁当 Copyright 日々野いずる 2018-12-12 06:00:04縦
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