碧い心音
塔野夏子

少年の 碧い心音が 秋桜の花束と 共振するから
ほろほろと 崩れゆく 夜の輪郭を 掬いとる指に
まとわりつく記憶は 水彩の淡さで かなしく
けれど窓の遠くに 群青の塔群が 絶え間なく
銀の月と 囁き交わしているから 眠れずに
ただ意識の界面を 辷り去る 純粋遊離線上の
座標を示す 素数のダンスを 見つめながら
ふいに 予感する 緑の天使と 硝子の角を持つ
一角獣の 邂逅を それは 忘れ去られた
噴水のそば とりどりの風船が 高く空に舞い上がって
消えてゆくのを いつまでも見ていたのは
双つの幼い瞳 やがて その街の上に 虹が架かって
きらめく旗たちが いっせいにはためいた 鳴り響く
鐘の音 幾重にも谺して 幾重にも 目覚めさせてゆく
きららかな夢を 昏い淋しさを あふれるほどに
抱えたまま 丘の彼方へ 駆けてゆくのは
きっと もう会うことはないひと だからここで ただひたすら
手をふる 手をふる




自由詩 碧い心音 Copyright 塔野夏子 2018-12-09 13:24:40
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