酩酊
山人

近所のスーパーに立ち寄り、ワンカップを二個買って
ベンチに座りキャップを開け飲む
公園デビューしたらしい母子がぎこちない笑顔で会話している
たがいの真意を探り合い、刃物を隠し、それでも笑顔が冷たく継続されている
俺はふっと笑った。なぜか笑える
血液が各所に鎮座し始めて、いちめん花畑のような安堵感に満たされて
少しだけ鼓動速度が増した息遣いを楽しむように、その高揚感を感じていた
その液体に美味さを感じるわけではなく
アバウトな低温で中途半端な甘さと辛さを備えたその無色透明でありながら
ややもすると少し色づいた液体がカップを流れ落ち
喉元を通過していく時の断末魔のような動きに快感すら覚えてしまうのだ
ベンチの鉄パイプは錆びていた
錆の匂いは血の匂い
俺の有り余った熱い血がベンチの鉄パイプの錆と同化してゆくのを感じる
 あの公園デビューした母子の若妻の脇はきっと汗にまみれているだろうと想像する
子は母の胸ですやすやと眠っている
どうかあの母子を守ってほしい
俺はそのことだけを願い、二本目のワンカップの最後の一滴を胃に落下させた

愛想笑いをし、他者と別れた母子は安堵の表情を浮かべ
息を吐きだすと不意に俺を見た
一瞥し、そこに不快な視線が落とされ、俺はそれを見逃すことは無かった
これから苦行が続くのだろう、俺と同じような
あたりまえのように、公園の木の葉が舞い始め
これからは冬になるのだと言い始めていた


自由詩 酩酊 Copyright 山人 2018-12-09 05:42:41
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