メアリーは病気(その三)
tonpekep

メアリーはエリザベスに最後の希望をかけて、なんとかイングランドに辿り着くが、そもそも宗派の違うメアリーを、歓迎するわけもなく(メアリーはカトリック教徒。エリザベスはプロテスタント。)また、メアリーがイングランドの王位継承権を持っていることもエリザベスには警戒の念が大きかったに違いなく、たちまち監禁される。

エリザベスに何度となく監禁を解いてくれるよう頼んでみたものの、絶対主義の権化のような女王に願いは叶えられず、19年間も監禁されることになる。メアリーは結局監禁されたのち、エリザベスの命により打ち首となる。

メアリー=スチュアートの人生は、恋愛と脱出、そして監禁という波瀾万丈の人生であった。その人生に対して、後世の僕が、結果から良い人生だったとか、悪い人生だったとかは決して判断できないのだが、フランスから出戻った後の彼女の人生はあまりに悲劇的だったかと思う。詩人シラーも、彼女の生涯に悲劇的なものを感じ、メアリーの戯曲を書いていることを思えば、メアリー=スチュアートという一人の女の一生は、僕達の感情を大きく揺さぶるものがあるのは確かだ。

女も男もそうだが、幸せというものにはっきりとした体系はなく、基準はそれぞれに委ねられているわけで、それぞれ個人の幸せな人生、不幸せな人生とは他人が判断するものではないように思う。判断の基準はそれぞれ各個人の、感情に左右されている。

断頭台に首をもたげながら、その人生を終えるとき、メアリーは自分の人生にどう結論を着けたのだろう。メアリーはメアリーで納得して、人生を終えたのかもしれない。

補足。

フランスに嫁いだメアリーは、フランス料理にでてくるデザートが大のお気に入りだった。スコットランドに帰ってからも、そのデザートのことが忘れられず、仮病をしてまでもそのデザートが食べたかった。それがマーマレードである。現在ではパンなどに塗って食べる物だが、当時はデザートとして食卓に並んだ。

マーマレードの語源は「メアリーは病気」という言葉からくるらしい。


散文(批評随筆小説等) メアリーは病気(その三) Copyright tonpekep 2005-03-27 11:36:35
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