メアリーは病気(その二)
tonpekep
それでも彼女はダーンリを愛し、彼の子を宿るが、その妊娠を知ったダーンリは何と彼女が流産するように陰湿な計画をたてる。ダーンリにとって、メアリーが産む子供は、やがて王になる権利を持つ人間になるからである。彼にとって我が子とは、王権を奪う存在の他の何ものでもなかった。ちょっと我々の身分では理解しようがない考え方である。
ある日、彼女の信任している秘書を彼女の目の前で殺害させてしまった。
ショックにより、メアリーに流産させようとしたその愚劣な暗殺計画は失敗したものの、ダーンリは彼女を閉じこめてしまう。一回目の監禁である。ただ、この時は何とか脱出することができた。この時匿ってくれた人物が軍人であったボスウェルである。妻子あるボスウェルであったが、メアリーはボスウェルと男女の関係になる。これが更に悲劇を加速させる。
ボスウェルを得たメアリーはダーンリに対して復讐を誓う。ボスウェルに命じて、夫ダーンリの館に爆薬を仕掛け、館ともどもダーンリを爆死させた、と通説はなっているが、実はこれは誰かの陰謀であったとも言われている。メアリーのボスウェル宛てに書いたと言われる、夫暗殺依頼の手紙は偽造であったことが現在解っている。真意はどちらとも今のところ定かではないが、当時はメアリーがダーンリ暗殺をボスウェルに依頼して、爆死させたと思われていた。これがメアリーの悲劇の決定的なものになる。
不倫の末、ボスウェルと結婚したメアリーであったが、国内諸侯の反感による反乱にあって、惨めな敗北を喫する。頼みの夫ボスウェルは、彼女を置いて国外に逃亡。いつの世でもそうだが、頼もしそうに思える不倫相手ほど、逃げ足は速いものだ。逃げ遅れたメアリーは退位させられ、再び幽閉させられたが、翌年、またまた脱出に成功する。この時メアリーは母国スコットランドをあきらめて、隣国のイングランドに亡命することを決意する。当時、イングランド王国の治世は女王エリザベス一世。メアリーの従姉妹であった。