クロッキー 2 うるま
AB(なかほど)

水玉記念日

 カラカラリン
   と卒園式
 はじめてのさよならは
   カルピスの味



あまがえる

 雨、降ってきたかとてるてるぼうず
 雨、降ってきたよとへのへのもへじ
 雨、降ったやろと黄色い傘
 雨、降ったんかとお地蔵さん
 雨宿り軒先探しながら帰り道
 君のお家はもうそこだよ
 雨、降るげんとランドセル
 見上げると母の傘
 僕は眩しくて笑ってしまった



ものかけ

 あの日君と僕が拾った木の実の種は
 同じように見えていたけど
 芽が出て葉がついて茎がやがて幹になるころから
 どちらの思いも
 お互い遠くから見えていたものとは違う
 なんて当たり前のはずのことつぶやきだして
 みちたりの実をつけた木の下は
 誘いの色と君の匂いに満ちていてとても
 とても佇んでなんかいられずに
 ものかけの実をひとつ齧り
 足早に家へ帰る



梯子

 屋根裏部屋には消しゴムの標本がある
 ってかりふぉるにあおじさんが声高々に自慢してた
 その中に砂消しもあるんやろかと
 梯子に右手をかけると親指がちょとだけ(約1センチ)
 短かくなった
 そういえばもうそろそろのはずなのに戻ってこない
 (もちろん僕の彼女のことではなくて
  かりふぉるにあおじさんのこと)



明日降る雨が

 明日降るはずの雨が雪になるという
 いたたまれない気持ちで坂道おりていくと
 君の住む町角ではもう
 もう静かに積もりはじめているのだろう
 と思えた
 流してしまうつもりの気持ちは
 静かに包み込まれて



こんにちは図鑑

 隣のカオリさんがきりのない話をする
 相手はうちの妻で
 僕はこれみよがしにほなまた回覧板を渡すのだが
 分厚い彼女達の図鑑に埋もれてしまうらしい
 おはようはいつも新しく
 おやすみなさいはいつも優しく
 休日の陽射しがとても穏やかでも
 彼女達の図鑑に僕らの居場所はない



頬杖

 言葉は心を越えられないこと
 知っているのに
 心が言葉を越えられないと
 うつむいてみる
 それが
 林檎のように沈んでゆく



とっぷりと

 とっぷりと暮れる今日の夜は気前がいい
 なのに僕は眠れない
 るるる、と目を閉じると
 今夜もあの夜と同じなんて嘘ぶき
 らいららいと言って僕もとっぷり暮れよう
 とっぷりと



優しい仕事

 まごころ屋が閉店になる
 食っていけなくなったのではなく
 もう跡継ぎができたという
 けれどこの町の誰もその跡継ぎのことは知らない
 まごころ屋は壊れたオルゴールの小箱を眺めながら今度は
 別離のテープの切ったり貼ったり屋になるという
 そんな人達に
 もう、いいのですよ
 と言うのが僕の仕事なのだけれど



うるま

 うるまうるまはじまりのなまえ
 うるまうるまぼくんちどこいったん
 ひんぷんよこのゆーなんぎーのそよと
 ゆーなんぎーはーめーのいとのつつつと
 はじまりのとおくとおくとおくの
 えがおのとおくゆうべのとおくの
 うるまうるまはじまりのなまえにもどって
 ゆうべのなまえにもどっても
 もうそこにはぼくんちないんだから
 あしたへあしたへあゆんで
 うるまうるまはじまりのくにへ




   


自由詩 クロッキー 2 うるま Copyright AB(なかほど) 2018-11-26 21:55:27縦
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