壊れたものと壊れた私は
こたきひろし

深夜
名もない公園の駐車場に車を停めていた
他にも数台停めていたが人が乗ってる気配は感じられなかった
そこへ巡回中のパトカーが入ってくる
俺の車の横につけて停まった
警官が二人降りてきて私の車の運転側のドアを叩いた
すると無人と思われた数台の車のヘッドライトが点灯した
それからまるで蜘蛛の子を散らすように駐車場から出ていった

他にも車はいたのに何で俺だけが職質を受けなくてはならないのか
疚しい事は何もしていない
一人でこんな時間に何してるの?
年配の警官が聞いてきた
それで納得した
俺以外の車は一人以上だったのか
別に何もしてません
と俺は答えた ただ家に帰りたくなかったからここにきてぼんやりしていただけです
それだけ 本当かい?
若い方の警官が言った 免許証と身分証明出来る何かを持ってたら見せてくれる
車の中も調べさせて貰うから
それは年配の警官が言った

俺はただならぬ事態に飲み込まれてしまった
冷静さを失い
止めてくださいよ 直ぐ家に帰りますから
すると
警官は言った
何も問題なければ帰っていいから

強引に車の中を捜索し始めた
直ぐに
助手席に置いてあった紙袋を見つけて
中身は何?
手編みのマフラーですが
大切なものなので誰にも触らせたくないです
もしかして彼女からの贈り物
ええそうです でも今夜振られました
振ったくせに
別れ際に渡されました
ずっと編み続けて やっと仕上がったから さよならの日にあげるねって
言われました
何それ?意味わからない?
若い方の警官が言った それでここで失恋の痛みを癒していたわけか

警察は民事に関われないからと年配の警官が言った
警官は言った 国家権力を代弁して





自由詩 壊れたものと壊れた私は Copyright こたきひろし 2018-11-21 20:15:59
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