小鳥の歌
la_feminite_nue(死に巫女)

小鳥のなかにある巣箱を見る。
小鳥のなかにある巣箱のなかには、
ちいさな穴があり、
それは小鳥にとっての全て。
穴の外には広い大空が広がっている。
小鳥の歌う歌声は、小鳥自身にしか聞こえない。
私たちには小鳥の歌を聞くことができない。
小鳥はやがて巣箱の外に向かって飛び立つだろう。
それは餌を求めているのか、自由を求めているのか。
私たちには知ることができない。
巣箱の外に出た小鳥の歌を、私たちは聞くことができる。
それは小鳥の胸から発した思いか、
世界への和合と共感の情なのか、
幾羽もの鳥たちの声と響き合って、
私たちの耳に届けられる。
小鳥のなかにある巣箱の面影を、私たちは見る。
そこに果てしない広がりがあることを、
巣箱から飛び立った小鳥を目にすることで、
私たちはようやく手に入れる。
鳥たちの歌はやがて世界を埋める。
そのときに私たちは、小鳥の巣箱のことを忘れ去っている……。
小鳥の巣箱のなかにあるのは、小さな穴。
それはかつての小鳥にとっての、世界の全て。


自由詩 小鳥の歌 Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2018-11-21 05:19:49
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