ひかり結ぶ手
木立 悟





何も無い場所に触れると光が割れ
もうひとつの陽が現われた
うつしみ うつしみ
いつくしみのない ただよい


重さの無い象が荒れ野に降り立ち
風の内の水を見ている
光は曇の網目の奥
地にはほとんど到かない


樹に囲まれたひとつの径
水たまりにだけ映る影
排水口の虹の旗
手のひらに手のひらにたなびかせ


光は重なり 音になり
音は重なり 意味になる
どこまでも どこまでも
見えない笑み


葉の音のなか
歪みのなか
夜を越え
歩き去る螺旋


ひび割れた泥に降る光
手の無い手から放たれる飛沫
割れ かがやき ひろがる夜
頬のかたちをなぞる指


赦されなかった黒髪の子が
夜の虹には赦されて
燈火の機械に触れる頃には
うなじだけが大人になっている


小さな手のひらが首に胸に降り
裂けめの光を抑えている
さらにさらに多くの手のひら
水たまりの底に重なってゆく


















自由詩 ひかり結ぶ手 Copyright 木立 悟 2018-11-19 19:56:49縦
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