誰かが誰かを呼んでいる
こたきひろし

誰かが誰かを呼んでいる
しきりに名前を呼んでいる
しかし
その声は辺りの喧騒にかき消されて
落日の空の彼方に吸い込まれてしまう

なにも知らない子供らは
何者かに
何処かわからない遠くへさらわれて
何かを知ってしまった大人たちは
絶えず得たいの知れない不安に脅えなくてはならないのか

忍び寄ってくる黄昏
すり寄ってくる夕暮れ
そして
沈んでいく夜の闇へ

俄に激しく降りだした雨は
勢いと激しさを増し続けて
世界はたちまち洪水に飲み込まれ
なすすべをなくし
それでもヒトは生きるすべにすがり
瞬きの間に
魚へと
魚類へと
後退をして進化した

筈がない


自由詩 誰かが誰かを呼んでいる Copyright こたきひろし 2018-11-14 06:43:03
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