深海魚
藤鈴呼



縁為しのシンメトリーを泳ぐ
底無し沼よりは ちょっと浄化された海
魂の隙間から そっと漏れる光を
待ち望んでいるかの様な 青
それは 儚い

少しばかりの四方山話に耳を傾けて
鱗の角度を探す
探知機は沖合に流してしまった
オール5の通知表など意味を生さない

風呂桶に残された空間は僅かな
幾何学模様を移しく描き始めた
すうっと伸びた耳の領域
今 弾むようなボール音が響いた
聴こえた?

蓋が選んだマトリックスに切り取られてしまえば
毛の一本一本まで縮れてしまいそうで
心と共に錠か表を選ばないと
今すぐに運ばないと
崩されてしまう 運命の積み木みたい

ふっと意識が遠のく瞬間に
きっと君は云うのだろう
死ぬ貯めの台詞なの? それとも
否 声をデカダンスにして告げる
生きる溜めのダンスだ

鱗の模様と固さが鈍色に輝けば
世界が瞬き始める
けれど 知っている
宇宙の中の 一粒の滴
今 流れ落ちた ひとしずくは
二度と 還らぬことも

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自由詩 深海魚 Copyright 藤鈴呼 2018-11-13 17:54:42
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