ただ遠い憧れ
立見春香


手も足もでない
遠さを感じ
わたしは青空を見上げて
懐かしいイワシ雲を見つけた

ずーっと
見上げつづけているだけだと
わかっていたんだけど

見も知らずの人に
歌を褒められて
心がつながった気がした
それは
夢の中での
現実ではない
暖かさなのかもしれない

でも
生きていて
こんなに穏やかで
フワフワした気持ちになれたのは
初めての体験だったので
ずいぶんとキョロキョロしながらも
自分の居場所を何度も何度も確認したよ


そこには
居場所が
あったんだ

ええ
たしかに
あったんだ


わたしの日は
そこで大きなカーブをして
ドンドンドンドン
イワシ雲に向かって
昇って行ったんだよ

うずくまって
靴の先ばかり見ていたのが
暗い過去のことに
なったり
とかね

わたしが青空にイワシ雲の群れを見て
懐かしいと思ったのは
希望を待っている人は
かつて
どこかのだれかに
暖かい気持ちにしてもらったことがあるから

かな?

その暖かさを
思い出したから

かな?

え?
あたりまえだって?

なら
あなたがおっしゃるなら
本当に


それをそうと
信じさせていただいても
良いんだよね

だからわたしは

ただ立って見ているだけで
春が香った

って
そんな想いを
こんなからだに体現させて
今日までは
歌を歌ったんだよ

憧れの

あなたに向けた歌を
ちょっと小さな声でだけどね






自由詩 ただ遠い憧れ Copyright 立見春香 2018-11-10 07:45:17
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