一度もまだ死んでないから
こたきひろし

人間
生きている間は生身
時には本能に逆らえなくなって
欲望に従順になるさ

男と女
女と男
たとえ愛し合ってなくても
一つ屋根の下に暮らしてしまう事はあるだろうよ

一つ屋根の下に暮らし始めても
隙間だらけの心は塞ぎ合える訳じゃないけどさ

だけど男と女だからさ
女と男だからさ

一つ屋根の下に暮らす内には
愛じゃない、その結晶じゃなくても
女は腹に子供を孕んだ
そうなったらそうなったで
風に帆が膨らんだヨットみたいになって
女は母性愛に目覚め
そして
産みたい
なんて言うんだ

そうなったらそうなったで
男は男で
父性に揺さぶられて
産んでくれ
二人で一緒に育てよう
なんて
言っちまったから
もう後戻りはできない
するつもりもなくて

父親に向かってひた走った
訳で



自由詩 一度もまだ死んでないから Copyright こたきひろし 2018-11-10 05:37:57
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