PINK
ミナト 螢

指を切り落とした手袋の先で
触れ合った時に起き上がる爪で
印を付けたい逃げられる前に

あなたが渦の中へ消えた日から
誰も寄せ付けず海は鳴いている

靴に入ってくる砂は記憶の
端っこで笑う小道具みたいに
私を困らせて歩けなくする

裸足になるにはまだ早い季節
肌寒い風に押される太陽の
光は折れて届かなかったよ

ひっくり返す靴の中にある
一枚の皮膚を見つめる指先

今度またいつかどこかで出会う
その時はきっと爪の代わりに
桜の花びらを乗せて待ってる

あなたが私を探せるための
淡い気持ちが消えないように
傷つけることなくピンクに染めて
春の足音を海へ投げよう


自由詩 PINK Copyright ミナト 螢 2018-11-09 08:09:24
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