横向きテトリス
藤鈴呼


夜半からの雨が 霙交じりの雪に変わった
とは 勘違いだった様だ
どうやら霰らしい

霞がかった空の向こう側に 淡く光る山並みも
今日こそ凍えている

震えるならば 今この瞬間であれ、と
軽く 舌打ちを 繰り返す

ワイパーが殴る 一粒一粒が
可愛らしいなどと 何て戯言

まあ戯け者よ! 道化師なのよ!
ザマス口調で文句ばかりを繰り返す

時代錯誤の女性の姿と
スカーフから零れ落ちる 甘ったるい香り

ジーザス あれは 遥かなる未知の灯り
憶えているのであれば 幼き昼下がりの公園で

刺されただろう 蜂の針に
ポプリのような香しさに乾杯

柑橘系と薔薇の違いは 
良く識っている筈だった

花粉症になった記憶はないが
鼻が効かないのが 唯一の課題だろう

くるり 動かしても リロードしない
鏤めたばかりの文字が 蝶の羽根の如く彩る白い画面は

憂鬱さと夕焼けの影に隠れて 
又 雪粒を生み出した

御覧 ひっきりなしに右側に寄せる ゴムの隙間で
スクラブのように寄り添う霰たちを

透明なフロントガラスの向こう側 それが
歯磨き粉の コマーシャル撮影会場だったかな?

含み笑いを繰り返しながら シグナル明けを待つ
飽きもせずに眺める 横向きテトリス

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自由詩 横向きテトリス Copyright 藤鈴呼 2018-11-07 19:25:54
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