郵便脚夫
ひだかたけし

谷底から
這い上がって来る強風は
この山の頂きで
ぽそぽそと降る雪となる
郵便脚夫のこの俺は
向こうの国に郵便を
届けにこの山を
越えねばならない
いかにも陰気な顔をして
日に日に何度も山路を辿り
降りしきる雪にびしょびしょと
果てない労役をこなしていく
こんな日々はいつか終わり
新たに耀く毎日が
必ずやって来るさと狂おしく
憧れ待っていたのは何時か
今ではすっかり擦り切れて
疲弊し切ったじぶんがいる
毎日毎日郵便を運ぶ
こちらの国から向こうの国へと
雪に塗れて往き来して

そうしてそれなのにこの俺は
向こうの国の人々と
一度として会ったことがない
そんなことを今更ながら
不思議に思って気付くのだ


















自由詩 郵便脚夫 Copyright ひだかたけし 2018-11-05 16:45:18縦
notebook Home 戻る  過去 未来