肉じゃが
ミナト 螢

煮込んでいるジャガイモを
箸で仕留めて目玉を二つ
描いただけの顔

人参に寄り添い聞く耳と
しゃべる口を与えてあげようか

玉ねぎと仲良しだから
いつも涙を流して空を見上げるよ

肉が汚したアクの浮いた雲を
透き通るまで誰かが捨てるんだ

肉じゃがを吹きこぼすような強火で
怒ったことは一度もなくても

鍋の中で転がりながら叫ぶ
家族がバラバラになってゆくのを
すくってくれるのは丸いお玉だ

皿に盛られる時には目が潰れ
世界が真っ暗にしか感じないけど

大切なものをしまったままの
輪切りにされたデンプンの栄養
命の源を作る仕事が
僕の内側でグラグラと燃える


自由詩 肉じゃが Copyright ミナト 螢 2018-11-04 08:39:44
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