天井の向こうの
鮮やかになるしかない空に沈殿した
新月をじっと眺めていたら
心臓から水銀がとぷり
流れ落ちた。
とぷりとぷとぷ
とぷとぷぷつつと
畳にしみた。

あの日と似てて
全く違う
カラスはくゎっくゎっと電線に生きている。

今更な話
カラスになりたいってのだけは
本気だったんだ。

けれども私は
大人になるしかないから
誰も信じてくれなかったし
私も信じてはいなかった。

天井の向こうの
明日になるしかない空に埋葬された
新月は否応なく満ちてゆき
心臓から水銀がとぷり
流れ堕ちた。
とぷりとぷとぷ
とぷとぷぷつつと
畳にしみた。

あの日と似てて
全く違う
カラスは不可逆の空に生きて死ぬ。


自由詩Copyright  2018-11-03 22:51:44
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