悪癖を愛す
卯月とわ子

貴方の瞳の中にわたしが居た

貴方は他人の目をしっかりと見つめて話す癖があるでしょう
わたしはそれが苦手だったのよ
何もかもを見透かされる気がして
でも貴方の瞳はそんな事を求めていた訳じゃないんだと
今になってようやく気付いた

貴方はわたしの中に
貴方に対する愛があるか確かめたかったのでしょう
わたしだけじゃない
他の人たちにも同じようにしていた

貴方は一人ぼっちが嫌いだから
いつも誰かを探していた
隣に立ったのが偶然わたしだった
というだけで
他の人でもこの役は務まるのだろうけれど

これも何かの縁だと
わたしは自分に言ってみた
その言葉はストンと心に落ちて
貴方を少しだけ可愛いと思うようになった

距離はこのままで居ましょう
近づく必要はないし
遠のく時が来たらそれはそれ
貴方を愛する別の人が現れたというだけの事

貴方の瞳の中のわたし
自分で思っていたよりも綺麗だと感じたのは
貴方の瞳の中に居たからだろう
本物のわたしは
もっとどうしようもなく情けない顔をしているもの

貴方の瞳にわたしが映っている間
わたしは貴方を愛するから
そんな心配そうに覗き込まなくてもいいのよ


自由詩 悪癖を愛す Copyright 卯月とわ子 2018-11-03 20:52:31縦
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