ひとの道
ゴデル

溶かした夜を流し込んで
ゆっくり固めた
冷たい道路

消えそうな
ヘッドライトだけを頼りに
僕は走り続ける

気づいてしまった

昼もまた夜で
光もまた闇だと

月も星も
そして
太陽でさえも

本当は黒いのだと

ならば
何のために走る
何を求めて走る

わからなくなった

止まってしまえば
いっそう
止まってしまえば
横に止めて
寝てしまえば

ダメだ
そうすると
ずぶずぶと沈んでしまう
底なしの夜へ

息ができない
苦しいよ

そして、また走り出した

見渡すと無数の車が
死にかけの蛍のような
頼りない光を放ちながら
走っている

お前たちも同じか
せめていい車に乗りたいな

ヘッドライトは
走り続ける者たちにとって
法のようなもの

生きるという
自殺行為を支える
黒いバイブル

たとえ
光のように見えても

この光が消えるとき
僕はガードレールをぶち破り
崖の下へと
落ちていくのだ

今はこの
ハンドルがとても重くて
勝手に向きは変えられないけれど





自由詩 ひとの道 Copyright ゴデル 2018-11-03 18:21:20縦
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