シャーベット
ミナト 螢

厚く張った氷を砕くために
ブーツの踵が地上へ届く

心臓が埋められた場所で
掘り起こしてる足跡の形が

誰にも踏まれず残っているのは
きっと一人で歩いたせいだね

氷と永の文字が出会う冬は
時間を止めることができるから
互いに知らん顔をしたとしても
思いがクリアになって重なる

透明な世界で呼吸をする
10秒という短い間にも

人は誰かに傘を差し出したり
ドーナツの浮き輪を投げたりして
心臓を落とさないように近付いた
みんな守り合って生きてゆけるね

私は多分ずっと落とし続ける
心臓に蓋をした氷の棺を
毎年ひとつずつ壊していく


自由詩 シャーベット Copyright ミナト 螢 2018-11-01 08:35:31
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