雪原の格闘の如く
むっちゃん

寒波の早朝 小舟を漕ぐように 雪道を唸りながら 前へ前へ

止まると 再発進は容易ではない

吹雪のアイスバーンは スケート走行 あっという間に 後ろ向きになる

風のキツイ橋の上は 歩道に乗り上げた 鉄の亀や ひっくり返つた とどが出現する

近道をもくろみ 農道に はまり 晒し者になる鉄の箱 放置されたバイク

帰省ラッシュに変貌する バイパス ラジオが唯一の友

春まで 雪の下に放置され 冬眠する鉄の熊 

河原の雪捨て場は 小山となり 岡となる 雪解けの春には 土砂に埋もれた いくさの跡

下町の裏通りは 体力 気力の 試戦場 運転技能も加わり 我が身の衰えを 実感する

年ごとに 重く 辛く

寒波が 居座ると 救急車のサイレントが 昼夜を問わず響き渡る

自然界が最も厳しい頃 人もまた同じである 

来るべき春への 憧れや 喜びとは 生けるものの 深くて 悲哀に満ちた営みでもある

うす闇の雲間から 舞い下る 幻想の情景 フワフワと白い天使がやってくる

やがて ざらざらと うす汚れて 固く 冷たく うずくまり 積み増して行き

除け者にされ 放置され 知らず語らずに 消えてしまう

やがて 用水路の汚水となり 河へ下り 大海に集い 波に揉まれ 嵐に叩かれ

雲へと昇りつめ 恵みのつぶてと成りて 帰る日は 

遥かに遠く 夢のまた先 

それでも この痛がゆい 生きざまから 解放されることを 誰かに約束出来るまで

気力を振り絞り 目を見開いて 求め続ける





自由詩 雪原の格闘の如く Copyright むっちゃん 2018-10-31 13:02:02
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