あこがれ
ゴデル

秋の空の
その
一番遠い所で
蒼く揺れていた
あこがれ
片思い

好きだった
だけど
決して
口に出して言わなかった

そばにいるだけで
よかった
それで充分

会っているとき
この地上が
海の底なのか
雲の上なのか
わからないくらい

好きだった

人見知りな彼女は
とげとげしく
近づくものを
不安にさせた

だけど
鈍感な僕は
彼女のとげで
指が血まみれになっても
痛くなかった

寝ても覚めても
見惚れていて
麻痺していたんだろう

僕は自分に誓った
生き物としての勘
「距離を保つこと。」

だから友達でいられた

彼女と恋人になるのは
蟻が蝶と暮らすようなもの
僕には羽がないので
そこは無理なんです

当たって砕けないで良かった
失いたくなかった
所有もしてなかったけど

だから友達でいられた

時が来て
人間同士が
普通に別れるような
別れがやってきた
今日のような秋の日

「これからどうするの?」
彼女が言った
「マスコミに就職する。」
僕は言った

嘘だ
思い付きだ

「似合ってるよ、頑張って。」

それが最後
この世のものではない
妖艶な彼女

「さようなら。」

僕は
胸の中でだけ泣いた
見上げると空は
やはり高くて
蒼くて
宇宙まで見透かされて見えた

気がした


自由詩 あこがれ Copyright ゴデル 2018-10-30 18:43:16縦
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