まどろみ
十一月の失敗作

気づくと森に向かう途中
緑の中赤い屋根の家が一際目立っていて
わたしは夢中でシャッターを押す

何度撮ってもぼやけて写らないその家が神秘的だったけれど
なぜかすんなりとそれを受け入れたのが不思議だった


気づくと森の奥
夜が更けた世界では
足に絡み付く泥を地面から這い出る無数の手のように錯覚する


「悪魔は口笛が得意」


いつものタイミングで声がする

もうすぐ連れ去られることを知っている


緑の香りが濃くなってきたのを感じ
息を深くする


「悪魔はくちづけの時だけやさしいの」


何度も聞くこの台詞


わざと目を合わせてからくちづけを交わす君

刹那

風船が萎むように肉が溶け骨になってゆく君

流れ出た血が足元に届き
わたしの身体を染めてゆく


遠くで君の声がする

必死に耳をすますけれど口笛の音が邪魔をする


わたしはそこで目が覚める
朝焼けが美しく見えるのがいつもながら可笑しい


誰かに追われているかのように毎晩繰り返す夢

最後の君の声がいつも聞こえない


今日もまた会える?


三つ目の夢で会いましょう


おやすみ



自由詩 まどろみ Copyright 十一月の失敗作 2018-10-30 00:01:39縦
notebook Home 戻る  過去 未来