落丁
ミナト 螢

紙の質感やインクの匂いが
伝わる指先を誰かに向けて

1ページの物語も読まずに
主役を生きてる人が妬ましい

自分らしい振る舞いやセリフを
学んできたのは同じはずなのに
シャボン玉の大きさが違うように

膨らませるコツを知らないから
割れる前に飲み込まれてゆくよ

吸収されてばかりの人生は
仕事が減って自由が増えていく

忙しさの中で割いた時間を
自由と呼んだあの頃みたいに

汗と涙が流れなくなって
与えられたストーリーに潜ると
最後のページが見当たらなかった

ここから生き直すプロローグが
存在の理由を確かめるため
自分の言葉で描いてく未来
欠けていたページを埋めていこう


自由詩 落丁 Copyright ミナト 螢 2018-10-29 08:24:01
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