清秋
AB(なかほど)

清秋


空清しとは季語のみで
ここ数年は
雨や風の災いに心痛めたり
意味のない達弁に
うつむいてしまいたくなる
そんなことが多い

それでも
ほんとの清秋が突然にやってくると
僕は
なおたまらなくなる空がある




どうして降ってくれなかったんだろうね


初めての男の子を
六ヶ月で持っていかれた母は
あらん限りの声を
張り上げ

それはどこまでも澄んだ
秋の青空に吸い込まれていった

その煙もやがて
秋の青空に吸い込まれていった




明けて静かな正月


少し笑顔の戻ってきた母の顔を見て
また
あの青空を思いだしてしまい


僕は振りかえって
あの日 
どうして降ってくれなかったんだろうね

写真に向かってつぶやいてみた




あれから
二十年以上の日々が通りすぎて
世の技術は目まぐるしく変わっているのに
世の中では相変わらずの
空しい詭弁が渦巻いている

それを君は見ている
という世界が
本当にあるのかどうか
判る術もないけれど
清秋
思い出してしまう空がある






自由詩 清秋 Copyright AB(なかほど) 2018-10-27 16:12:47縦
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