ROSSO
ミナト 螢
ディナーのパスタはボンゴレロッソ
口の周りで太陽が踊る
紙ナプキンに吸い取られた熱が
唇の形をかたどりながら
渡せる相手が未だにいない
テーブルで話す恋人たちは
いつの間に名刺を交換したの
本物の唇に触れる夜を
少し噛みすぎて赤く染まった
血の味とロッソの味を比べて
笑い合っているふたりの間を
クラシックの有名な曲だけが
通り過ぎるのを許されていた
スプーンとフォークで音を立てても
下品になるからやめようとして
この渇いた喉に気付いて欲しくて
咳をするフリでみんなが振り向く
キスまでの距離が遠くなるほど
口に手を当てて隠したいのは
唇の輪郭がぼやけていく
ロッソで汚れた恥ずかし跡
自由詩
ROSSO
Copyright
ミナト 螢
2018-10-27 08:15:13