冬の便り
立見春香



立っている
緑の丘陵の木の下に
落ちた葉っぱが風に舞う

どこからか聴こえてくる
ギターの練習のメロディー
ほんのすこしだけ
オレンジの香りがする

どの山から舞い降りてきたのか
真っ白な世界に住む鳥よ
その美しい羽ばたきが
わたしを子どものころに
帰してくれるみたいだ


あの少年の
涙をきっと見た

わたしには
なにもしてあげられないのに


そんななかでは
神様に祈ることだけが
やってはいけないことだと知る

山の中で
冷んやりとした湧き水が
滝の水の流れに変わる
ほんのりとオレンジの香りがする
それは夕日の色にかぎりなく近い
オレンジ色をした
オレンジの香りだったのかもしれない







自由詩 冬の便り Copyright 立見春香 2018-10-27 04:00:56
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