花束とへび
田中修子

ほら、わたしの胸のまん中に光をすいこむような闇があいていて、
そのうちがわに、花が咲いているでしょう。

ときたま目ぇつむってかおりに訊くんだ、
ああ、この花がうつくしく咲いているのはね
わたしの生き血をすって想い出になってるからなんだよね。

ひとはかんたんに、
かすれた声で
「もう死にます」
なんて言うんだ、
とてもまっ黒な眸でさ。

ほんとうはいつだってそうなんだよ
たださ、ひっしに目を逸らしているんだよ

皮を石にこする。じり、じり、とうろこのこげるにおいは、

いままで幾重も、剥いで、剥いで、剥いで、
おまえはいつか現実でみた夢を叶えるのだろう
それはこんな胸のなかでにおいたつ花とはきっと違うんだ
衝動が来たら深呼吸して

生きるんだよ。

こんなみっともない、くだらないからだで這いずってんだ
そうして皺が増えたわたしを、
ゆびさして笑え。

老いてとぐろを巻く、わたしの内側で、
別れたあの日のまんま、淡い輝きをはなつ花が
甘えて、眠っている。


自由詩 花束とへび Copyright 田中修子 2018-10-26 11:03:56縦
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